2008年05月31日

とまらないダイエット

   「白衣の堕天使」掲載より抜粋


 看護師をしていてあるまじき行為だが、私は拒食症と過食症になった事がある。もう10年も前の話だ。

 私の身長は169cm・当時体重54kg・・・・・はっきり言って普通だ。現在よりも少しばかりポチャッとしている位。だけど、まぁ年頃だったせいかダイエットに関心があった。もともと、新体操をしていたので痩せ型だったのだが、学生生活で寮暮らし・乱れた食生活がもとでスレンダーな体型から標準的な体格になった事が、あの頃の私にはショックだった。
 だが、ちょっとやそっとで済まないダイエットには危険もいっぱいあるし、それ以上にそこまでダイエットに走ってしまう、メンタル的な問題を解決しなければ、ダイエット地獄からは抜け出せない事を身をもって知る事になった。
 ダイエットを始めたのは、はっきりとした理由はなかった。ただ、あの頃の私は自分に満足していなかった・・・・・どこか不安定だった事は確かだった。(今でも、そうとうアンバランスだが。)何でも話せる友人も、安定した職業も、同棲している彼氏もいた。でも、不安定だった。治療法も薬もなく、ただ進行していく患者さんを前に、自分に出来る事はなんなのか、ないような気がして自分に嫌気がさしたり、仕事以外でも自分の存在そのものを認める事が出来なくなっていた事は確かだった。
 私が手を出したダイエットは単純だった。食事をほとんど摂らない。同棲している彼氏もいたので、ダイエットをしている事を悟られたくなくて絶食まではしなかったが、3交代であった事が幸いして、顔を合わせない時は何も口にしなかった。
 必要量を摂取しないのだから、体重は面白い位減っていった。どんな服でも着られるし、なにより痩せたと言われる事が嬉しかった。しかし、ある程度減少すると少し停滞する時期がある。その時に「あー、失敗した。」と、諦めれば良かったのだ。
 かるくダイエットを考えている場合、そんな事にはならないのだが、本当に本気でダイエットを考えている人が身近にいたら気をつけて欲しい。体重が下がらない=罪 になってしまうのだ。体重が減らない ⇒ 自分が悪い ⇒ もっと努力しなくては・・・・・
 はっきり言って、病気である。
 私は、今まで以上に口にしなくなった。でも、目は何かが欲しい。手に取る食品すべてカロリーの欄をチェックする。今では大概どんな商品にもカロリー表示されているが、当時はされていないものの方が多かった。表示されていないものは買わなかったし、されていてもせいぜい50Kcal位までのものしか買わなかった。彼氏と食卓を囲む時まで、ほとんど口にしなかった。「なんで食べないの?」と聞く彼氏に、「ストレスかな?胃が痛いの。」と、嘘をついていた。
 体重は42kgまで低下した。169cm42kg・・・・・。今、当時の写真を見ると、はっきり言って気持ちが悪い。骨皮筋子だ。当然、Sサイズの服もガボガボでかえって格好悪い。彼氏とねていても、「なんかゴツゴツする。男抱いているみたい(笑)。」と、言われる。でも、その最中にいる時は自分の姿がおかしいことに気が付かない。痩せて満足どころか、まだまだ痩せたりない気がしているのだから・・・・・。
 しかし、身体は危険信号を出していた。入浴中、身体を洗っているだけで息切れしていた。細くなった脚はほんの少し立っているだけで、異常に浮腫んだ。酒を飲むと代謝しなくなって、トイレが遠くなり、全身が赤く腫れ痒くなった。何より思考回路が停滞した。
 そして、食べたかった。ほんまもんの本能だ。
 結果、拒食から過食にスイッチした。
 ケーキを20個買って、10分もせず全部食べたり、デパ地下から餃子をたくさん買ってきてデパートの屋上で全部食べたり・・・・・。
 今度は、食べた事が罪になる。だから、吐く。
 ・・・・・もう、本当に悪循環だった。

 唯一の救いは、私自身が看護師で、病的な知識があった事かもしれない。すでに自分が病人である自覚があった。
 それでも、しばらくはダイエットを中止する事に対する不安が根強く残っていた。やっちゃいけない、と思いながら吐いてしまったり。1日に体重計に何度も乗ったり。

 他の事情も重なって、私はしばらく看護職から離れた。フリーターになって、キャンペンガールやイベントコンパニオンなどするようになった。そして、私のダイエットは終わった。
 ゆっくりした時間や、拘束される事はない安心感、何処にも属さない事による自由さ。その間、3ヶ月位の短い期間だったが、私にとっては大事な時間だった。自分を見つめ直す事が出来る時間だったのかもしれない。鬱状態の時に、休息するのがいちばんの治療だというのは納得がいく。
 それこそ、閉じこもったり、喋らなくなったりという事こそなくても、メンタル的な病理って紙一重だと思う。
 たかがダイエット・されどダイエット。
 今、ダイエットをしている人、しようと思っている人。痩せたい思いというのは、美的追求だから否定はしない。でも、その前にご自身の現在の深層心理をよく理解してもらいたい。引き返せなくなる前に、よく考えて。
posted by 木下小櫻 at 16:11| Comment(0) | 復刻・白衣の堕天使 (看護師時代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。